どうしようもない恋の唄

眠れなくてベッドで考え事してたんだけど、自分のこと情けなくてちっぽけで醜くてカッコ悪く思えてきて苦しいんだ。実際のところ俺は空っぽなんだよ。いろんな事こなした気になってるだけで、人のこと好きになれるほど綺麗な心も持ってないし、俺は若いだけの男だ。死んだってなんでもないよ。許されるためにこう言うけど。もう俺に猶予なんてなくて、寝る暇も惜しんで何かに取り組まなくちゃいけない。今日読み終えたグミチョコレートパインの賢三みたいに、死ぬ気になって夢中にならなくちゃ。同年代のやつはとっくに始めてるよ。ずっと生活すらままなってないからさ、そろそろ向き合わなくちゃいけない。本を読む、映画を観る、音楽を聴く。真剣になりたいな...。

 

最近の俺のこと、話させてくれ。

聞いてくれる人があんまりいなくってさ。

お前くらいにしか話せないんだ。

3学期始まってからは毎日登校しなくちゃいけないのはもちろん、おまけに授業まで出席してないといけなくて、まぁどうにかこうにか息を殺して耐え忍んでる。でも朝なんかはさ、慣れだね。少しずつ、まぁ最近は寒くて敵わないけど、苦痛でもなくなってきてる。今までの比じゃないくらい教室にいる時間も長くなったわけだけど、前よりも仲良くなれた奴だっているし、少しずつ普通に近づいてる気がして嬉しいんだ。やっぱり。でもさ俺みたいな醜くて汚れた人間はもうあんなふうには戻れないのかなあって、楽しそうなクラスメイト遠目で眺めながら思っちゃうな。あんなふうな日々はきっと愛おしくてたまらないだろうな。今だって、こんな日々だって、大切に大切に思ってるけどね。休みの日なんかは友達と遊んだりもしてる。こないだやっとスケジュールのアプリを入れて、予定が埋まるってのは嬉しいね。こないだはさ、どうにか、何かをやらなくちゃって、よく行くお店の大将に背中押されて、高円寺のライブハウスのオープンマイクの日に出演した。セブンでビール買って勢いよく食らって、ブルブル震えながらステージ立ったよ。案の定最悪だった。声震えてるし歌詞もメロディーもあってないようなもんだし。オリジナル2曲にカバー4曲。ピーズもやったよ。でもね、出てよかった。何事も逃げ出したくなりながら勢いつけてやっちゃうのがいいね。

って、そんなことはどうでもよくて(よくないけど)今朝の話を聞いてくれ!いつもと同じように俯きながら家を出て、駅についたでしょ。そしたら中央線が大幅に遅延してて、もう大混乱。すごい人の量な訳。俺は足が浮いちゃうような満員電車が久しぶりだったから、ちょっと楽しみながらあったかいなあって呑気に揺られてた。結構遅刻ギリギリだったんだけどね。乗り換えの駅に着いて、改札に向かってたら、俺の前にクラスの大好きなあの子の後ろ姿があったのよ...。散々だったね〜とか、やばいね〜とか声かけようって考えながら近づいて、寸前まで声が出かけたけど、こんな俺だから最後の最後で勇気は出なくて、そのままあの子は視界から消えちゃった。俺はなんて情けない奴なんだって悔しくて悲しくてとりあえずイヤホンつけてロック聴いたはいいけど、そのときは落ち込んだよ。でもまだ話には続きがあって、学校の最寄駅に着いたら同じクラスの別に仲良くもないけど話せる奴がいて、まぁそういう関係ってあるじゃん?だからそいつと学校向かって歩いてたのよ。そしたら、トボトボ怪しげに歩く俺の前にまたあの子が歩いてたからドキーッってしてるのも束の間一緒に歩いてた奴が下の名前でその子のこと呼んで、その子は俺の隣に...。挨拶すら最初はできなかったけど、少し歩いてるうちにいける気がしてきて、目を見てあの子に「中央線使うの?」って声かけた。勇気出した。いつもと同じ、笑うと無くなる優しい目で俺のこと見て、最高にキュートな声で答えてくれた。あの子は誰とでもそんなふうに楽しそうに話すことくらい知ってるけど、俺にとっては革命なんだ。数回あの子と会話できただけでもね。なんて素敵な時間だったろう。寒さなんて全く気にならなかったと思う。あの子に執着してるだけなのかな、恋に恋してるだけなのかな。もうこればっかりはわからないけど、とにかく、あの子はすごく可愛いことは知ってる。嘘じゃない。情けないね。俺は。もうずっと、傷つくことや恥をかくことが恐ろしくて、怯えながら暮らしてる。でも俺どのみちこんなんなら、堂々としていたいって最近考えるんだ。今までの高校生活、なんだったんだろうなあってよく考えるけど、あの子の笑顔で涙が出るようなどうしようもない、夜がくれば、俺はまた少し安心できるんだ。

とにかく、こんなおセンチな夜も全てがギリギリな俺のことなんか置いて日々は過ぎていく。そんなことくらいもうわかった。それなら俺は苦しいだろうし格好なんてつかないだろうけど、そのときそのときのこと愛したいし怒りたいし悲しみたいし抱きしめたい。明日は金曜日。教室の端で、いつまで遡っても同じ俺なんだなってこと考えながら、あの子の笑い声に苦しもうと思う。